僕は子どもらに選んでもらって父親になれた。
職場で子どもが生まれて父親になった男性社員がいた。
嬉しそうに出産の報告をする彼の姿に、初めて僕が父親になった日のことを、ふと思い出した。
第一子出産のときに、産婦人科の分娩室前の廊下で、落ち着きなくうろうろしながら、赤ちゃんが無事生れてくるそのときを待ち望んでいた。
そして分娩室から響いてきた長女の泣き声に、父親になれた自分を感じていた。
もしかしたら、初めて父親になった彼もそんな時間を過ごしたのかも知れない。
【わたしがあなたを選びました】
僕は、僕がこの子らの父親になれたのは、子どもらが僕を父親に選んで生れてきてくれたからだと思っている。
果たしてその選択が、子供らにとって正解だったかどうかはわからないけれど、それでも僕の子どもらは、僕のことを父親として選んで生れてきたのだと強く思っている。
わたしがあなたを選びました。
「わたしがお父さんを選んで生れてきたんだよ」
初めて自分の子をその手に抱いたときに、子どもの目が僕にそう訴えかけた。
そんな気がした。
子どもらが大きくなって、生意気になって、憎たらしくもなったとき。
僕は子どもらに選ばれたんだと、自分に言い聞かせてみると、自然と憎まれ口を叩く子どもらでさえ愛おしく感じてしまうわけで、僕が今でも胸を張って子どもらに相対できるのも、自分が選ばれた父親だという自信が保てているからだと思うんだ。
そんな思いもあって、
僕は初めて父親になる職場の男性職員にこの本を贈った。

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この本は産婦人科医師の鮫島先生が書かれた本。
主にお母さん向けに書かれた本かも知れませんが、お父さんが読む価値も十分にあります。
子育てにつかれた時や行き詰ってしまったときに開いてみると、心から愛おしいと感じた親子関係の原点に立ち返れると思います。
僕が父親であることの最後の支え。
子どもらが成長していく中で、父親は母親に比べ、その役割をそれほど感じなくなっていく。
僕は父子家庭だったので、親としての役割を感じなくなるってことはなかったのですが、子育てに対して悩むことも多かったけれど、それでも父親としてはあまり役割を感じなくなって、投げやりになってしまうことも少なくはなかった。
そんな時にいつも思い浮かべるのは、子どもらの生まれてきたときの眼差しでした。
「わたしがお父さんを選んで生れてきたんだよ」

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子どもらの選択が正しかったのかどうか、その答えは子どもらにしかわからないけれど、それでも僕はこの子どもらに選ばれて父親になれた。
いつもそう思って子どもらと関わってきた。
それが僕の父親としての存在の最後の支えでもあったんだ。

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もし子育てで悩んだり、疲れたり、行き詰ったりしたときに、この本を読んでみて下さい。
この本は初めてのパパさんママさんに贈りたい本です。
この本は初めてのパパさんママさんに是非読んで欲しいと思う本です。
もちろん、ベテランのパパさんママさんにとっても読むに値する本だと思います。僕もこの本を手にしたのは、再婚して、末の四人目の子どもが生まれるときでしたから。
でも、僕がおすすめするこの本は全ての方に受け入れられるものでもないのかも知れません。
例えば、残念にもお子さんができない方、例えば、流産死産の悲しい経験のある方は、もしかしたらこの本を読むことで不快になってしまう場合もあるでしょう。
「自分たちは選んでもらえない」
そんな変な誤解を感じてしまうこともあるでしょう。
全ての方にお勧めできるとは言えないそんな本でもあります。
それでも、少し興味を持たれた方がいたらこの本の頁を開いてみて下さい。
あなたの子どもたちは、父親となるあなたを、母親となるあなたを、自分の意思で選びこの世に生まれてきたんです。
あなたを親として育てるために。
子どもらの選んだその選択肢が、決してが間違いではなかったことを、僕たちは子どもらに選んでもらった親として、示してあげないといけないと思ったりします。
「わたしがあなたを選びました」
抱き上げた我が子の眼差しに、
「僕を選んで生れてきてありがとう」
そう囁いたあの誕生のときを思い起こすことができる、そんな一冊です。
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