離婚を切り出された時の夫の反応は概ね決まっている。
離婚を切り出すときの妻の気持ちは分からないけれど、妻から突然「離婚して」と言われた時の夫の反応は、概ね、「なんで?」と思うらしい。
妻が離婚を決意したその気持ちを夫は理解できていないという。
僕も初めて妻から離婚話を切り出されたときは、妻の気持ちなんて理解できていないし、「なんで?」って反応だったと思う。
だって、僕は仕事もちゃんとやっていたし、給料もしっかり渡しているし、結婚してからは、家事も妻と分担制でやっていた。育児にだってすこぶる協力してきたと思っていたんだ。
家庭第一主義を自負して、休みの日には一日中子供らの世話もしてきていた。
どこが不満なんだろう?
というのが率直な僕の気持ちだった。
ただ、その半年前から何となくその兆候は感じていた。
家族で出掛けるのを避けるようになったり、夜に一人出掛けてくることが多くなっっていたし、休日や土日になると休日勤務が組まれていると言って仕事に出ることが増えてきていた。
まさか、男?
そんな考えも脳裏を過らないことはなかったが、妻を疑うこと自体が失礼なことだと思い、家を空けることの多くなった妻に対し、気に留めないように意識していた。
「どうして離婚したいの?」
思い当たる理由がない僕は、妻に聞き返した。
そんな僕の問い掛けに対して妻は、
「別に、何となく」
妻のその返事は、僕を少し苛立たせた。
何となくで親が離婚したら、子供らはどうするんだよ。
僕は真っ先に片親を失う子供らの気持ちを考えたけれど、妻には子供らを思いやる気持ちが、その時にはもう既になかったのかも知れない。
最初に「離婚したい」と切り出されたその日は、たぶん僕と妻が離婚する半年くらい前の出来事だったかもしれない。

父子家庭へのカウントダウンが始まった時でもあった。
離婚する夫婦にとって、すごく便利な言葉がある。
離婚にはそれぞれの夫婦にそれぞれの理由があるわけだが、司法統計による2004年度と2012年の婚姻関係事件申し立ての動機から離婚理由を男女別に見てみると、下記の通りとなっている。
2004年 | ||
順位 | 男性の申立て理由 | 女性の申立て理由 |
---|---|---|
1位 | 性格の不一致 | 性格の不一致 |
2位 | 異性関係 | 暴力を振るう |
3位 | 性的不調和 | 異性関係 |
4位 | 浪費する | 浪費する |
5位 | 暴力を振るう | 性的不調和 |
6位 | 病気 | 酒を飲みすぎる |
7位 | 酒を飲みすぎる | 病気 |
2012年 | ||
順位 | 男性の申立て理由 | 女性の申立て理由 |
---|---|---|
1位 | 性格の不一致 | 性格の不一致 |
2位 | 異性関係 | 暴力を振るう |
3位 | 精神的に虐待する | 生活費を渡さない |
4位 | 家族等との折り合いが悪い | 精神的に虐待する |
5位 | 性的不調和 | 異性関係 |
6位 | 浪費する | 浪費する |
7位 | 同居に応じない | 家庭を捨てて省みない |
一方、民法770条1項に定められている法定離婚事由は下記の通りとなっている。
1.配偶者の不貞な行為があったとき
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき[ad]
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5.その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
男女とも1位となっている申し立て理由は「性格の不一致」で、これは2004年も2012年も変わっていない。法的な離婚事由に当てはめるなら、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当することなのだろう。
そもそも生まれも生活環境も違う男女、性格や考え方が違うのは当たり前のことです。恋愛結婚が多い昨今、自分とは違う相手の部分も含め、互いに惹かれて結婚したのも事実なのに、「性格の不一致」を理由に離婚する夫婦が多いのはなぜだろう?
もりかしたら、不倫関係に陥ったり、暴力やギャンブル、性的不調和が原因で離婚する場合でも、世間体を気にして「性格の不一致」を理由にすることが多いのかも知れない。
芸能人の離婚の記者会見の場でも、離婚理由のそのほとんどがこれだもん。

離婚する夫婦にとって「性格の不一致」はとても便利な言葉なんだね。
結局のところは。
「離婚」を切り出す場合って、妻の方であっても夫の方であっても、既に相手に見切りをつけているわけで、そのときの気持ちなんて「早く別れたい」という気持ちであることは間違いないだろう。
けれども、離婚に至る理由がたとえ同じ理由であっても、各々の夫婦でその中身は色々とあるわけだ。

切り出すまでの思いというものは本人にしかわからない。
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