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田舎者の僕は、彼女の住む街まで行くだけでも、かなりの疲労感を感じてしまった。

回顧録

もしかしたら、会う前に断られる場合だってあるのかも知れない。

僕は彼女の写真を見て固まってしまった。

「困った」

人間には一般的美的感覚と個人的美的感覚いうものがある。
一般的美的感覚からみると彼女は間違いなく「美人」の部類に入るのだろう。

だけど、僕を唖然とさせたのは、もう一つの個人的美的感覚。
そう、それは「個人の好み」と呼ばれるもの。
僕に女性に対する外観の理想があるとすれば、彼女はそれに限りなく近かった(あくまでも僕の理想像に)。

「だめだ」
「これじゃ僕なんかじゃつりあわないや」

愕然としてしまった。
と同時に、今更ながら彼女に一目惚れしてしまったのだった。
僕はそのまま、

「一目惚れしちゃいました」

と、彼女に感想を送ったが、僕が送った写真に対する彼女からの返事はこなかった。

やっぱり。と思っていたところに、

「彫が深くて、睫毛が長いね」
「少なくとも、私が今までに会ったことのない部類の顔ですよ」
「何か外人さんみたい(笑」

と言うような返事があった。
ちなみに僕の弟は平井堅にそっくりなのだが、僕の祖父の祖父はスペイン人らしいので、僕には若干外国の血が流れているわけだから、彼女の感想は、あながち間違いではなかった。

どうやら取り敢えず、僕の外見は彼女のストライクゾーン外角低目ギリギリで入っているようだった。

 

よかったよ。

 

そして、いよいよ、僕は彼女に会いに行くことになった。

僕は子供らには「出張」と嘘をついて、実家にお泊りに行ってもらった。(悪い父親だ)
因みに、実家の親にはちゃんと話しておきましたよ。

忘れもしない、9月21日。

僕は彼女に会うため飛行機に乗った。
そう、飛行機なのだ。
電車や新幹線でもない。高速道路を使ってでもない。
飛行機を利用しないと簡単に彼女へ会いに行くこともできない。それくらいに僕と彼女の地理的な距離は離れていた。

なんて経済負担の大きいお付き合いなんだろうね。

「今から、会いに行きます」

飛行機に乗る前に彼女へメールを送る。

「やっとこの日がきたね」

彼女からの返事は、弥が上にも僕の緊張感を高める。
彼女の返信を読みながら、僕の頭の中は、THEBOOMの「星のラブレター」が鳴り響いていた。

その日は彼女の子供(桜より1歳年下と聞いていた)の運動会で、運動会のあとは毎年親子で外食をしていると言っていた。

「一緒に食べにいく?」

と、彼女に、たぶん冗談で誘われたが、今回は遠慮した。
だって、僕を一体なんて紹介するん?
彼氏?
それとも、
友達?

 

まだ、彼女の子供に会うほど、
僕の心の準備は整ってなかったんだ。

その日の夕方、僕は彼女の暮らす街にたどり着いた。

朝方に家を出たが、彼女のところについたのは午後4時を過ぎた頃だった。
飛行機から電車を乗り継ぎ、やっと彼女の住む街。
もともと人混みが苦手な僕は、自分の住む田舎町から彼女の住む街までの道のりには随分と神経を使って、すこぶる疲れてしまった。

本当は早めに着いて、こっそり運動会を覗きに行こうかとも思っていたが、電車の乗り継ぎ(僕は田舎者なので電車の路線が全くわからなかった)で手間取って、運動会も終わった時間にようやく彼女の住む街へ着いたから、そんな目論見もかなわなかった。

彼女から事前に教わったとおりのルートで駅前のビジネスホテルにたどり着いたけど、緊張と不安で心拍数が上がりっぱなしだった。
ホテルの部屋に入ると、僕はベッドに倒れ込むように横になった。

「今着いたよ」
「娘ちゃんは(運動会)頑張ったのかな?」
「明日会いましょう」

と、やっとたどり着いた安堵の溜息と一緒に、

 

彼女にメールを送った。

 

 

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