そこは、慌ただしい日常から離れた、僕の心地好い場所だった。
久しぶりに掲示板に顔を出すと、メンバーが僕を心配していてくれた。体調崩したんじゃないかとか、子供が病気でもしたんじゃないかとか。みんなに変な心配を掛けて申し訳なかったけれど、何だかとても嬉しかった。仲間がいるっていいものだと実感した僕だった。一人じゃないんだと。
直接のメールも(PCのフリーメールのことです)何通か届いていて、他の誰よりも彼女(トピ主)が一番僕ことを心配してくれていたようだった。だからなのか他のメンバーからは、
「ひでじさんが顔を出さなかったから、トピ主さんが寂しそうでしたよ」
なんての皮肉めいたコメントも飛び出した。
僕の勝手な思い込みでみんなに、そして彼女(トピ主)に心配を掛けたことを、僕は少し恥ずかしく感じた。
やはり掲示板のそのトピは僕にとって和む場所だった。そして何よりも彼女(トピ主)がいるその場所が、慌ただしい日常から少し離れた、僕の心地好い場所になっていたのかも知れない。
この場所で息抜きすることで、

子供らの前でも笑顔でいられるんだと、
僕はそう実感した。
もしかしたら、僕は彼女(トピ主)の特別な存在になれているの?
それから暫くして僕と彼女(トピ主)は、以前のような関係に戻っていった。
「ひでじさん、急にいなくなったりしないよね」
彼女(トピ主)は僕が、自分勝手な思い込みで掲示板に顔を出さなくなったことを、すごく気にしているようだった。そして、せっかく何でも相談し合えるような関係になったのだから、理由もなく誰かがいなくなるのは嫌だと僕に話した。
そして、もし何か都合が悪くなって、例えば、互いのパソコンが壊れてネットが繋げなくなったり、掲示板やトピが急に閉鎖されたり、そんなことで二人の関係が途切れることにならないようにと、僕に携帯電話の番号とメールアドレスを教えてくれ、そしてこう付け加えた。
「わたしは誰にでも携帯番号や携帯のメールアドレスを教えてるわけじゃありません」
このトピには十数人の男性がメンバーがいるけれど、彼女(トピ主)が番号やアドレスを教えたのは僕にだけだと言った。
少し信じられなかった。いや疑う訳じゃないけれど、でも信じられなかった。
たかだか携帯の番号やメールアドレスを教えてもらえたくらいで有頂天になるのもおかしな話だけど、
もしかして僕は、

彼女(トピ主)の
特別な存在になれてきたのかな?
ひでじ、図に乗って告白。
僕は意外に、生真面目な性格でもある。そして意外に、直球勝負の男でもある。更に意外に、自意識過剰な思い込みの激しい男でもある。また僕はA型男子なのである。

A型男子は恋愛で傷つくことを非常に恐れるので、相手の気持ちを十分に察知してからでないと行動にも移せないタイプなのだが、相手が自分に好意をもってくれているとわかれば行動は早い。
そんな僕の座右の銘は「思い立ったが吉日」でもある。
という訳で(どういうわけだ?)僕は思い切って自分の気持ちを伝えてみた。
僕が暫く掲示板のトピに顔を出さなくなった訳を、彼女(トピ主)との直接のメール(PCのフリーメールのことです)を控えるようになった理由を。そして、僕の気持ちを。
「君に惚れちゃったみたいだ」
僕のいきなりの告白に、彼女(トピ主)は少し驚いたようだった。
それから、僕からの告白を疑りげに答えた。
「名前も顔も年齢さえわからないのに?」

そう言われたら、
確かに、そうだよね。
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