遊びに行った公園で、娘は寂しい思いをしてしまったのだろうか。

回顧録

僕ら親子の日曜日のお出掛けの定番は、近くの公園だった。

晴れた日曜日には、僕は桜と幹をつれて公園に行くことが多かった。
僕の地元はど田舎だったから、遊園地のように子供らを遊ばせる遊戯施設はなくて、子供らと遊びに行くときは公園とか、河原とか、そして海とか。ほぼお金のかからない場所ばかり。

「ちち、サンドウィッチ作ろう」

桜はお出掛けの時はいつもサンドウィッチをリクエストする。

「ぼくは、おにぎりがいい」

幹はお米党でご飯が大好きだ。

日曜日の朝、早起きした子供らのリクエストに応え、僕はサンドウィッチとおにぎりをこしらえる。

日曜日に出掛ける話しをすると、子供らは前の日からめっちゃテンションが上がって、なかなか眠らず夜更かししてしまうから、僕は日曜日の朝に出掛けることを子供らに伝えることにしていた。
前日の土曜の夜。

「ピンポンパンポーン」
「本日の父の業務は全て終了いたしました。またのご来店をお持ち申し上げておりまーす」

そんな言葉を掛けて早々に子供らを寝かしつける。
そして翌日の日曜日の朝は、パン屋のおじさん並みの早い時間に子供らを起こして、お出掛けの準備を始めるんだ。
子供らと三人で出掛けるのは僕にとっても楽しみな一日となる。

何も考えず子供らとただひたすら遊ぶことで、仕事の疲れも父子家庭の生活の不安も吹き飛んでいく。
先の不安に頭を悩ませるより、いま子供らと楽しむことの方が大事だし、何よりも面白い。

幾つかの行きつけの公園があって、どこの公園にいくのかも三人で決める。
桜はは大きな滑り台がある公園に行きたがるし、幹は砂場が広い公園が好きだった。二人の意見が合致するのは遊具が充実している公園だけど、僕のお気に入りの公園は木陰に大きなベンチがある公園。ベンチで横になって休めるからだ。

 

子供らと遊ぶといいながら、公園のベンチでごろんとしてるのが好きだった。

 

 

娘の視線の先にあった、家族の連れの風景。

公園に行くと真っ先に二人はブランコへ向かって走り出す。
僕はお昼のために用意したお弁当を入れたバックを肩にさげ、子供らの後を追いかける。

二人の乗ったブランを後ろから押してやるが僕の役目。
幹を押して、桜を押して、幹を押して、幹を押して、桜を押して、これが意外と大変なんだよな。桜は思いっきり押してやってもいいけれど、幹を押す場合は加減が必要でしょ。
以前、加減がわからず押してしまって、ブランコから落っことしたことがあるから、細心の注意が必要だ。

ブランコが済んだら、今度は滑り台。お次はジャングルジム。そしてまたブランコ。
子供って元気だよな。二人の後を追いかけながら汗だくになる僕。
ほんの小一時間も遊び回っただけで、僕はもうくたくた。

公園の隅の木陰に敷物を敷いて、用意したお弁当を広げた。
その日は暑過ぎず、寒過ぎず、ちょうどよい涼しい日だった気がする。子供らは僕が作ったサンドウィッチとおにぎりを美味しそうに頬張っていた。
僕は子供らがお弁当を食べる様子を眺めながらごろんと横になる。ぐーたら親父の定番のポジショニングだ。

サンドウィッチを美味しそうに食べて満面の笑みを見せていた桜だったが、公園の片隅に視線を向けたまま表情が強張った。

「ん?」

鈍感な僕だったけど、桜の表情の変化にすぐに気付いた。

桜の視線の先には、仲の良い親子連れが砂場で遊んでいる風景があった。父親と遊ぶ小さな女の子。そしてその様子を笑いながら見守るように眺めている母親。
桜はその親子を眺めながら固まってしまっているようだった。

幹は母親との記憶はあまりないが、桜には母親の記憶が十分すぎるほど残っている。
仲の良い父親と母親に囲まれた女の子。

 

そんな親子の姿は桜の目にはどんな風に映っていたのだろう。

 

 

甘えたい気持ちを抑えている娘を甘えさせてあげた。

いつもなら、幹を抱っこして桜とは手を繋いで帰る帰り道。
甘えたくても、幹がいるときは自分から抱っこなんてせがむことのない桜。きっと本当はもっと僕に甘えたいんだと思う。まだまだ甘えさせてもいい年齢だ。

その日僕は、桜を抱っこして幹の手を引いて家路についた。

 

恥ずかしそうにしながらも、

少しニヤついていた桜の笑顔を今でも覚えている。

 

 

 

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