スポンサーリンク

喘息発作に苦しんでいた長男に、僕は偽薬効果で対応した。

回顧録

長男の幹は小さい頃、身体が弱かった。

僕の地元では、男の子は小さい頃は弱いものだというのが当たり前という風潮があって、風邪を引いたり、お腹を痛くしたりすると、「男の子だから仕方ないね」という言葉をかけられたりするんだ。

幹もその通りで、よく風邪を引いたり、熱を出したりする虚弱体質だった。

僕は自分の用事で仕事を休むことはほとんどなかったが、幹が体調を崩したことで会社を休むことは多かった。年間20日の有給は、ほぼ子供らの学校の行事や幹の体調不良で使っていた。

幹は小児喘息を患っていて、天候や季節の変わり目には、発作を起こすことが少なくなかった。特に喘息の発作は夜間に彼を襲うことが多かった。
横になると咳込んで眠れず、苦しさに泣き出す幹を膝に抱え、彼の胸をさすりながら寝かしてあげる。

看病の「看」は手で見るって書く。なるほど僕が幹の胸を静かにさすってあげると、不思議に彼の咳は少しだけ治まって、寝付きやすいみたいだった。
どんな薬よりも触れてやることが幹には一番の処方だったのか、マザーズタッチならぬファザーズタッチで、僕は幹を朝まで寝かしつけることも度々あった。

ちょうど今頃の梅雨入りの時期は、幹の喘息発作がひどく出る時期で、僕はほとんど眠れず、翌朝眠い目をこすりながら仕事に出向くことも少なくはなかった。

 

まだ若かったから頑張れたが、
いまのこの歳では耐えきれなかったに違いない。

 

夜間診療に連れていくことも度々あった。

それでもいくら僕が幹の胸をさすってあげても、発作が治まらず、息苦しさに大声を出して泣くこともあって、そんなときは、夜間に病院に連れていかなければならない。

でも夜間に長女の桜を一人家に残して、幹だけを病院に連れていくのも不安だった。例えば火事になったりしたらとか、もしものことを考えると、一人置いてはいけない。

桜を起こし、一緒に車に乗せて連れていくしかなかった。

桜も幹が喘息で発作を起こすことは分っていたから、夜間に起こされても何も文句も言わず駄々をこねるでもなく、さっさと支度をして、車に乗り込むと後部座席にごろんと横になる。
僕は助手席で息苦しそうに泣いている幹の胸に左手を当てながら、後部座席で寝ている桜の様子ををバックミラーで確認しながら、

 

こんなときは、
やっぱり両親揃っている方がいいな。

とか、思ったりしていた。
そんなことから、僕は手助けを受けられやすいように、僕の実家の近くに引っ越すことを決めたんだった。

 

恐るべしプラシーボ効果。

幹の喘息の発作が起こると、治まるのには結構時間がかかった。
病院で吸入器の検討もしたけれど、ステロイドの副作用が怖かったので、医師も最終手段ということで勧めなかったし、僕も幹に使わせようとは思わなかった。

そこで、僕はプラシーボ効果を使ってみることにした。

 

偽薬(ぎやく)は、本物の薬のように見える外見をしているが、薬として効く成分は入っていない、偽物の薬の事である。成分として少量ではヒトに対してほとんど薬理的影響のないブドウ糖や乳糖が使われることが多い。プラシーボ(英語: placebo 英音: [pləˈsiːbəʊ] 米音: [pləˈsiːboʊ] [plæˈsiːboʊ])、プラセボ(フランス語: placebo [plasebo])ともいい、いずれもラテン語: placēbō [plakeːboː] プラケーボー(「私は喜ばせる」の意)に由来する。医学・薬学では「プラセボ」を用いることが多い。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

駄菓子のラムネを細かく砕いてオブラートに包み込んだものを用意しておいて、喘息発作が起きた時に、

「これは、保険がきかなくてすごく高かったんだけど」
「最近開発された特効薬なんだ」
「子供が飲みやすいように甘く味付けしているから飲みやすいよ」

僕は、それらしい解釈を付けて、それを幹に飲ませてみた。

「特効薬だからすぐに、ぜーぜーも治まるよ」

そう言いながら、僕は幹を膝に抱えながら彼の背中をそっとなでる。
不思議だよね。
駄菓子のラムネなのに効果があるんだ。
暫くすると、幹の呼吸苦は治まって彼は僕の腕の中ですやすやと眠り始めた。

毎回効果があるわけじゃなかったけれど、ラムネの特効薬のおかげで、夜間診療に連れていく回数は格段に減ったんだ。

 

効果は個人によって差異があるので、

お勧めはしない。

 

年齢が二桁になれば治るものさ。

僕の地元では、小児喘息は大きくなって体力が付けば自力で治ると言われている。歳が二桁になれば発作も自然になくなるから、それまで頑張ればいいと。
それは当たっていて、いまは幹は喘息の発作を起こすことは全くなくなった。

でも、果たして歳が二桁になったから治ったのかどうかは分らない。

ちょうど幹が9歳になるときに、僕らは地元を離れて関東に引っ越しをすることになったから、もしかしたら環境が変わったことが要因で、喘息が治まったのかも知れない。

まあ理由がどうであれ、幹の喘息が治まったことには変わりないのでよしとしたい。

その代わり、幹はいま鼻炎アレルギーに悩まされていて、

 

ティッシュボックスは彼の必需品となっている。

 

 

コメント